フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 エリザ様がこの城に訪れたのは、使命あってのことだったのだろう。だとしても、想い人がいながらエドワード様に嫁ぐのは、形ばかりとしても辛かったに違いない。

 エドワード様の足が止まった。私を振り返り、眉をひそめて笑っている。

「想像でしかありませんが……エリザ様は、辱めを受けてしまわれたのでしょう。どんなに強くとも、愛する者がいたら、お心が弱られても仕方ありません」

 エリザ様と同じ辱めを受けていたら、私だってどうなったかわからない。
 フェルナンドの薔薇として、それでも毅然と戦ったかもしれないし、堪えられず同じ道を歩んだかもしれない。

 どちらかわからないけど、いえることが一つだけある。

 今、私がここにいるのはエドワード様が助けてくれたからよ。もしも五年前、エドワード様がエリザ様を愛していたら、彼女は助かったのだろう。私が、助けられたように。

 エドワード様の手を握りしめ、彼を見上げた。

「私は大丈夫です。エドが、助けてくれたから。だから……もう、自身を責めないで」
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