フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 いくら身なりを下級貴族のようにしても、気付かれるに決まっているわ。

「そわそわして、粗相なんてしたらエドワード様に泥を塗ることになるわ。気持ちを鎮めて備えないと」
「そんなことないと思いますが?」
「フェルナンドの薔薇として、しっかり視察をこなしてみせるわ」
「……視察じゃないと思うんですけど」

 デイジーは少し呆れたようにため息をついたけど、私はそう思うことで気も引き締めた。

 絞られた温かいタオルが、香油にまみれた足を優しく拭った。

「お忍びなら、下級貴族の流行りを取り入れたドレスを用意しないとですね」
「そんなに張り切らなくても……」
「なにを仰いますか! いつものお召し物では、目立ってしまいますよ」
「……それもそうね」

 指摘され、デズモンドから持ってきたドレスを思い出した。確かに、私のドレスは重厚なものが多い。

 金糸や銀糸で丁寧に編まれたレース、ガラスビーズや宝石で飾られたリボンは、下級貴族が身に付けられるものでもない。
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