フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 ◇

 窓の向こうには、今日も清々しい青空が広がっている。
 開け放たれた窓から吹き込む初夏の風が、とても気持ちいい。

 着替えを終えて化粧台の前に座った私は、外から聞こえる小鳥の鳴き声を心地よく感じていた。

 一ヶ月前は、この穏やかな空気に慣れないと思っていたけど、慣れてしまうものね。それは果たして、フェルナンドの薔薇として喜ぶべきことなのか。

「リリアナ様、今日はうんと可愛くお化粧させていただきます!」
「ほどほどでいいわよ」
「お任せください!」

 だから、ほどほどでいいのに。
 アルヴェリオンに来て、すっかりこちらの侍女と仲良くなったデイジーはすっかり馴染んでいる。化粧やファッションの研究、令嬢の間で流行ってる文化まで、ありとあやることの情報を集めていた。

 彼女は元々、情報収集能力にたけているし、順応性もあるからなせる技よね。

 ぱふぱふと粉がはたかれるのをじっと待ちながら、次第に心が浮わつくのを感じた。
 どんな顔になっているんだろう──

「さぁ、出来上がりましたよ!」

 促されて目を開けると、そこには見知らぬ少女がいた。
< 33 / 275 >

この作品をシェア

pagetop