フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「……サフィア?」
「とてもお似合いでございます。明日に備えて裾を直させていただきます」
「私も手伝いますね!」

 涙に見えたのは、気のせいだったのだろうか。デイジーと手を取り合うサフィアに、なにかを憂える表情はもうなかった。

 さっき私じゃない誰かを呼んだ気がするのも引っ掛かるわ。
 やっぱり、このドレスを着たことのある令嬢がいるってことよね。それはいったい……エドワード様に聞けば、わかるかしら。

 ふと、エドワード様の声が脳裏によみがえった。それは私の名を呼ぶ声のはずなのに、どうしてか、他の人を呼んだような気がした。

 胸がきゅっと締め付けられる。
 この気持ちはなんなのかしら。わからないことだらけだわ……

 鏡の中、可愛らしいヒマワリのドレスを着た私は、フェルナンドの薔薇に似つかわしくない、頼りなさげで不安な顔をしていた。
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