フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
小銭を投げる子どもを真似て、私はドキドキしながらそれを投げた。
キラキラと輝く銀貨が、男の持っていた帽子にストンと落ちる。
旅芸人の男はこちらに気付くと、少し目を見開いたようだった。でも、すぐ笑顔になって紳士らしい挨拶を披露した。
こんなこと初めてだわ。
胸が熱くなって立ち止まっていると、エドワード様に手を引かれた。
「さあ、行こうか」
歩き出すと新しい曲が始まった。少し後ろ髪を引かれる思いで、旅芸人一団の横を通りすぎた。
「気に入ったかい?」
「まだドキドキしています。デズモンドにはこんな催しないから……」
「そうなのか」
少し驚くエドワード様を見て、私たちは違う世界を生きてきたのだと痛感した。
デズモンドの音楽を思いだしながら、エドワード様の手を握りしめた。