フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 どういうことかしら。魔王様は私に、国を捨てよと申されるのか。

 頭が真っ白になった私は、言葉を発することも出来ず、玉座におられる若き魔王様を見上げた。
 心の奥まで見透かすような、冷たい金の瞳が私を見つめている。

「輿入れは、ひと月後だ。フェルナンドの薔薇よ、その命、デズモンドのために輝かせよ」

 深く響く魔王様の声に、私は頭を下げて「仰せのままに」と答えるしかなかった。

 ◇

 悲しむ間もなく私は人族の国へ旅立つことになった。

 長い道のりの末、馬車の外に見えた景色は、落ち込んでいた私の心を動かした。

 街道は鮮やかな花が飾られ、通りすぎた城壁の向こうでは煌びやかな服を着た子女が行き来していた。
 商人たちも、武器や弾薬、怪しいものを売るのではなく、美味しそうなお菓子や美しい織物を並べている。

 なんて活気なのかしら。

 色とりどりの旗がはためいているし、祭りでもやってるのかと勘違いするほどの賑わいだった。

 子どもが菓子を片手に笑っている。それを抱き上げる母親も、怯え一つなく楽しそうだ。デズモンドの魔物に怯えている親子とは大違いだわ。
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