フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 視線が逸らされると、言葉にできない不安がよぎった。

 デズモンドの話しなんてしたから、私が母国を恋しがっていると勘違いさせてしまったかしら。

 私は、魔王様にアルヴェリオンへ行けと告げられた。帰ってこいといわれない限り、この結婚を破棄することは許されない。
 魔王様の言葉は絶対なの。だから、もしもエドワード様に見捨てられたら……

「色々な店があるよ。あそこは──……リリアナ?」

 ぎゅっとエドワード様の手を握りしめながら、苦しくなる胸に手を添える。

 こんな戸惑いや感傷はフェルナンドの薔薇に相応しくない。いつものように毅然と振る舞わないといけない。いけないのに……心の柔らかいところに、陽気な音楽が響く。

 聞こえてくる楽しそうな談笑と私の身を包む黄色いドレスが、心を脆く柔らかくしていくようだった。

「旦那様……お許しください、私は、フェルナンドの薔薇ではいられそうにもありません」

 はらはらと涙がこぼれ落ち、頬を濡らした。
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