フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 エドワード様に手を引かれるまま、路地を曲がった。
 石畳を進んでしばらくすると、立ち止まった彼が「ここのケーキが美味しいんだよ」といった。

 顔をあげると、店の軒先に下げられた花籠が見えた。その上には、小さな銅製の看板にハースローゼと書かれている。

 店内に入ると、エプロンドレス姿の女性が出迎えてくれた。私よりもうんと年上で、お母様と同じくらいの婦人だわ。
 女性は朗らかに笑った。


「あら、ぼっちゃま。早いお越しですこと」
「ダリア、その呼び方はやめてくれと、いっているだろう。私ももうすぐ三十だ」
「可愛い奥様を泣かせてしまうようでは、まだまだ子どもですわ」
「そ、それはだな……とにかく、少し休ませてくれ」

 困った顔をして私を見たエドワード様は、耳元で「彼女には頭が上がらないんだ」と小さくいった。

 後で聞いたのだけど、彼女はエドワード様が幼い頃の家庭教師だったそうだ。
 今は、趣味の園芸とお菓子作りが高じて、パサージュの一角に花を楽しめるカフェを出しているのだとか。
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