フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 新しい帽子を手に、早鐘を討つ胸を鎮めようと必死になっていると、支払いを終えたエドワード様が私を呼んだ。

「リリアナ、こちらを向いて」

 いわれるまま顔を上げると、武骨な指が、顎下で帽子のリボンを結んでくれた。
 
「うん、可愛いよ」
「……ありがとうございます」
「さあ、もう少し見て回ろうか」

 再び手を繋いで店を出て歩いていた時だ。
 エドワード様は雑貨屋の前で立ち止まり、ガラスの向こうを指差した。

「見てごらん。今日のリリアナみたいだ」
「私みたい?」

 なんのことかと不思議に思って覗いてみると、そこには黄色い薔薇とヒマワリの造花で作られた髪飾りがあった。

「これも買っていこうか?」
「帽子で充分華やかです。そんなに花で頭を飾ったら、おめでたすぎます」
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