フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「……魔物を食い止める魔族を恐れる人族もいると聞いております。我らも、戦闘力は人に劣らぬと自負しています」

 だからこそ、アルヴェリオンを落とせという過激派がいる。それを、魔王様は良しとしないから、こうして和平条約を維持されているのだろうけど。
 その本心を知る者は誰もいない。

 膝の上で手を握りしめ、言葉を探した。

 今、私はフェルナンドの薔薇として、あるまじきことを話そうとしている。こんなことを話していると、魔王様が知ったら裏切りと思われるかもしれない。でも、私は──

「劣らないのはそこだけです。きっと、英知は人族にこそあると……この輝く街並みを見て、敗北感すら感じています。いつか、デズモンドはなくなるのではないかとすら。そんなこと、思ってはいけないのに」

 声が震えた。

 魔王様はお強いし、騎士たちも精鋭ぞろいだ。
 だからこそ、魔物の脅威を前にしながら国が成り立っている。でも、こうして穏やかな街を見て、アルヴェリオンを知っていくと、不安になる。
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