フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 アルヴェリオンに嫁いで、エドワード様が大切に思ってくれているのはわかるけど、私の心はまだデズモンドを離れられないんだわ。
 過酷な国でも、あそこが私の生まれ故郷なのよ。

 エドワード様は私を見つめたまま、ふむと小さく頷き、お気持ちを話し始めた。

「リリアナ。私は、デズモンドを恐ろしいとは思っていない。むしろ、頼もしいと思っている」
「……頼もしい?」
「英知だけではどうにもならないこともある。力と英知、お互いを補えたら素晴らしいとは思わないかい?」

 強く握りしめていた拳に、そっとエドワード様が手を重ねた。

「優劣などつけなくていいんだ。私とリリアナが共に歩くように、アルヴェリオンとデズモンドも手を取り合っていけばいい。そう思っているよ」
「……エドワード様」
「とはいえ、私は王弟でしかないから、兄上の考え次第ではあるが……和平条約を反故にするような人ではないよ。心配することはない」

 その言葉を信じていいのか。いいえ、私は信じるしかないのだろう。
 エドワード様の手を握ると、温かな声が「大丈夫だ」と耳に響いた。
< 74 / 275 >

この作品をシェア

pagetop