フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 自室で一人になり、ほっと息をつく。
 リボンタイを緩めながらソファーに座ると、心地よい倦怠感が襲ってきた。

 胸のブローチに手を触れ、天井を見上げて今日のことを思い出す。
 小さなトラブルはあったものの、大事にならずよかった。王妃の手先が間者でも紛れ込ませているかと警戒したが、考えすぎだったか。

 外したブローチをそっと握りしめ、リリアナの姿を思い出した。

 いつもの凛々しい立ち姿と異なる愛らしいドレスは、エリザがよく着ていたものだった。
 あの姿で泣かれた時は、「リリアナを不幸にしないで」と責める幻影さえ見えた。

「不幸になどするものか」

 同じ過ちは繰り返さない。そうエリザの墓に誓い、リリアナをこの城に迎えたんだ。

 始めこそ義務感が強かった。
 エリザへの償いのようにも思っていた。だが、今はそれだけではない。

 国を出て不安だろうに、リリアナは一つも不平不満をいわない。
 なんて強情なんだと思いもした。だが、私の顔に泥を塗るわけにいかないと、慣れない習慣に全力で向き合う姿が、輝く薔薇のように見えるようになった。
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