フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 リリアナを愛おしいと思うのに時間はかからなかった。

 そんなリリアナが、パサージュで涙を見せたのだ。初めて、私に弱さを見せてくれた。
 
 デズモンドとアルヴェリオンの違いに戸惑い、思うことがたくさんあるのだろう。
 旅芸人の歌一つで、あれほど感情を揺さぶられるほど、私の知らないところで、気を張って過ごしているのかもしれない。

 私を真っすぐ見つめるラピスラズリの瞳を思い出すと、切なさに胸が締め付けられる。

 ふと、エリザの幻影が「ちゃんとリリアナを見てますか?」と問うてきた。
 手の中にあるブローチに視線を落とす。
 
「……大丈夫だ。リリアナから、目を逸らさないよ」

 私に都合のよい幻影が笑った気がした。

 そうだ。彼女を見守り続ける。必ず幸せにする。争いごとのない日々を、リリアナに贈ろう。それが夫としての務めでもある。

 だが、この城には悪魔がいる。

 脳裏に冷ややかな黒い瞳がちらついた。それと、時を重ねるごとに覇気が失われる兄の姿を思いだし、悪い予感が背筋を震わせる。
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