そのストーカー行為、お断りいたします!

「リズリット……? この奥に居るのはリズリットだよね……?」

 ハウィンツが優しく扉に向かって話し掛けると、扉の奥でガタリ、と気配が動くのが分かった。
 その音に反応したハウィンツが「リズ!」とさらに声を掛けると扉の奥からか細いリズリットの声が聞こえて来た。

「──ハウィンツお兄様……?」
「ああ! そうだよ、リズの兄さんだ! 何があった? 開けて貰ってもいいかい、リズ」
「わ、分かりました……っ」

 ハウィンツの言葉に、リズリットが焦ったように声を出すとカチャリ、と部屋の施錠を解錠する音が聞こえた。

 ゆっくりと扉が開かれる事に焦れたハウィンツは自らガバリ、と扉を開くとリズリットの名前を呼んで涙の跡が痛々しく残るリズリットの表情と、果実水でべったりと濡れてしまったリズリットの髪の毛に痛ましげに表情を歪めた。

 扉から姿を見せたリズリットの姿に、ハウィンツは一瞬だけ呆気にとられたような表情を浮かべたが、直ぐにその表情は険しく変化した。

「──リズリット、その姿は何だい? 何故、リズリットの瞳に泣いた跡があって、何故リズリットの髪の毛が果実水に濡れている?」
「それ、は……っ」

 ハウィンツの低く、冷たい声音に思わずリズリットが言葉を詰まらせると、ハウィンツがハッとしたように瞳を見開き、リズリットを優しく抱き締める。

「ごめん、リズリットに怒っている訳じゃないよ。リズリットを悲しませる奴に怒っているんだ。リズリットを、俺の可愛いリズを悲しませたのは誰だい?」

 口元は笑みの形を作っているのに、瞳は全く笑っていない兄、ハウィンツの姿を見てリズリットはひゅっと息を吸い込むと、自分の首を小さくふるふると横に振った。
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