それも、初恋。。
「それじゃ、もうコウタ君とつながる手段ないじゃないですか!SNSないですよね」
「SNSなかったわねぇ」
 がっくりだ。

「……私、SNSあんま好きじゃないし、繋がり過ぎるのめんどくさって思ってましたけど、桜井さんの話聞いてると、自分は幸せな時代にいるんだなって、ちょっと思います」
 少なくとも橘とは、たとえ学校が離れても、疎遠になっても、『元気?』とか気軽にSNSで聞くことができる。
 気軽に連絡できる環境がある。
 だからといって気軽に告白できるかと言えば、それはまた別の話だけど。
 
 いろいろな嘆きを混ぜ込んだため息を吐きながら、中庭へ続く引き戸を開いた。
 ドーム状に囲われた中庭は全館空調のおかげで年中小春日和だ。
 芝生の緑も鮮やかで、色とりどりのパンジーが咲き誇っている。
 気持ちよい中庭の中でも、最も気持ちよさそうなロケーションのベンチを探して、車いすを転がした。

 私が選び抜いたベンチに腰を下ろした桜井さんが、すーっと緑の空気を吸い込んで「お花のいい香りがするわぁ」と微笑む。
 私も桜井さんに倣って空気を肺に取り込んでみる。確かに、フローラルな匂いがする。微妙に人工的だけど。

「スマホはなかったけれどね」と、私を振り返った桜井さんが、小花のようにくすっと笑う。

「なんと一緒だったのよ」
「何がですか?」

「通学ので・ん・しゃ」
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