それも、初恋。。
「やっべ、理科の教科書忘れた。泉貸してー」
「いいよーって、おい。うちら同クラでしょーが。橘に教科書貸したら私のが無くなるわ!」

「なんだ、引っかかんなかったか」
「引っかかるかい」

「お前らまーた漫才してんの? オレも混ぜて~。直太君仲間外れにされると死んじゃう生き物って知ってんだろー」
「いや、あんたの橘が私の教科書をカツアゲしようとしてるんすよ。親友なら友達の非行を止めてくれ」

「いずの~ん。早く理科室行かないとチャイム鳴るよ~」
「あ、今行くー」

 べぇ、ときっちり変顔をきめてから教室の廊下へ走り去っていった泉。

「さて、オレらも行きますか」と直太に促され、机から実験ノートを引っ張り出していたら、ドタタタタタとイノシシの突進みたいな音がして、くせ毛を1.5倍に膨らませた泉が息を切らして戻って来た。

 俺の前でピタッと見事に止まる。このバスケ上級者のディフェンス的な動き。やっぱバスケ辞めたってのはすげぇもったいない気がする。
 泉は理科の教科書をでんと机に置いてみせた。
「え?」

「はあ、はあ、はあ。5組のりんちゃんから、はあ、はあ。理科の教科書、借りてきた。終わったら、はあはあ。自分で返しに行けよ。自分でな」

「お、おう。サンキュー」
「早坂りん。目がくりくりしてて、髪がさらっさらの超可愛い子だから。早坂りん、です」

 泉の大きな目が、瞬きせずにこっちをガン見して、早坂りん。と念じる。
 いや、目がくりくりしてるのはお前だし。

「じゃ。急いでるんで」
 用件が済むと、どぴゅーんとマンガのような凄まじい速さで走り去っていく。やっぱ速ぇ。なんだあの運動神経。

「だーめだって、秋人。汐見はオレと同じで、ちょっとおバカなお人よしなんだぞー。ウソをまっすぐ信じちゃう哀れな奴なんだぞ~」
 泉の運動神経に感心していると、隣で直太がため息を吐いた。
< 58 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop