うちの生徒会長は今日も読めない
愛美はその他にも、敬人の好きな食べ物や趣味、苦手なことなど何も知らない。
息子にまるで関心がないのではないかと疑問を抱くほどに。
秋螺はかつて、愛美の気を引くために彼女の息子に会ってみたい言ったつもりだった。
だが本当は、むしろ彼女の方が、母親の愛に憧れる秋螺の気を引くために、息子のことを愛しているフリをしていたのだ。そう気がついた。
気がついてからは、少しずつ少しずつ愛美への愛情が冷めていった。
──そして、ある日大きな転機が訪れた。
よく晴れた土曜日の昼。
秋螺は外出先で、誰かが話しているのを聞いた。
「西のアパートで火事があったらしいぞ」
変な胸騒ぎがした。秋螺たちの生活するアパートがある方角だ。
嫌な予感というのは当たるもので、急いでアパートに戻った秋螺の目に映ったのは、煌々と燃え上がる真っ赤な炎だった。
「子どもが取り残されてるぞ!」
呆然と立ち尽くすことしかできなかった秋螺は、誰かの叫び声にハッとした。
確か愛美は仕事に行くと言って秋螺より先に家を出ていたから無事だろう。だが敬人は?