見上げた星空に、奇跡が降る

38 たった一つの願いぐらい

 ―オリオンー 

 暗い天井が目に映る。
 
 体はまだ重く、呼吸も浅い。

 けれど、胸の奥には、さっきまで見ていた景色の余韻と、あの願いがまだ残っていた。

 「時間……は⁈」

 壁の時計を確認する。

 どうやら間に合ったみたいだ……。

 けれど……。

 空は曇ったまま。

 「……う……ぐ……」

 ベッドから足を下ろすだけで、全身に痛みが走る。

 息が詰まって苦しい。

 相当……まずい状態だ。

 いつもなら、こうなる前にナースコールを使っていた。

 枕元にはいつでも押せるそのボタンがある。

 だがそれは出来ない。

 今、安静に寝ている事は出来ない。

 僕には時間がないんだ。

 「…………」

 咳をしながら、壁によりかかりながら立ち上がり、パソコンの電源を入れる。

 通知が来ていた。


 =やっぱり、無理みたいですね=


 「…………」

 《迷い猫》……彼女は諦めかけているようだった。 

 ここまで来てそれはダメだ。


 =諦めないで=


 なんとかそれだけを送信してから窓を開けた。

 冬の冷たい空気が病室に一気に吹き込み、カーテンを激しく靡かせた。

 空は確かに厚い雲。

 もうすぐ時間がくる。

 駄目だ!

 窓の縁を掴んでいた手を離す。

 「オリオンは……誰にも負けない程に力強い英雄……」

 だから自分の名前に当てた。

 胸を押さえていた手が震える。

 「たった一つの願いぐらい……叶えてくれてもいいだろう!」

 冬の風の音にも負けない程の衝撃が、辺りに……空へと広がっていく。

 僕の何処にそんな力が残っていたのか分からないぐらいの圧だった。

 「…………」


 目が霞んで、僕はその場に倒れた。
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