恋愛未経験な恋愛小説家の私を、何故か担当さんが溺愛してきます!?
*
翌日。朝10時。
もしかして昨日のことは夢?と思いながらも、私は化粧をしていた。
こんなにきっちりと化粧をするのはいつぶりだろうか。何年か前に出席した授賞式以来かもしれない。
「氷上さん、本当に来るのかな……」
好きだなんて言ってくれたけれど、きっと私にすごく気を使ってくれたに違いない。
「私がっ……恋愛描写ド下手恋愛小説家なばっかりに……っ」
自分の無能加減を悔やんでいると、あっという間に約束の11時になり、私の気も知らずに今日も玄関のチャイムが軽快に鳴った。
「は、はい!」
慌てて出ると、そこにいたのは当然氷上さんだった。
ほ、本当に来た……!
「おはようございます、美琴さん」
「おっ、お、おはようございます……っ」
「では、行きましょうか」
「は、はい!」
どうやら夢でも妄想でもなく、今日氷上さんとデートするのは本当らしい。
氷上さんの横を右手と右足を同時に出して歩きながら、ちらりと彼を横目で窺う。
今日の氷上さんは普段のぴしっとした高そうなスーツ姿ではなく、薄手のジャケットにパンツ姿だった。
すらっと背の高い氷上さんによく似合っていて、でもきっとどんな服でも着こなしてしまうのだろうなぁ、とそんなことを思っていると、氷上さんとばっちり目が合った。
内心「ひぃっ」と思っていると、氷上さんは私を見て優しく微笑んだ。
「美琴さん、今日のワンピースも可愛いですね」
小花が散りばめられた長袖の秋物のワンピースは、紺色で派手でなく、自分で言うのもなんだけれど私に合う落ち着く色だった。
「えっ、あ、ありがとうございます……」
私はぺこりと小さく頭を下げる。