恋愛未経験な恋愛小説家の私を、何故か担当さんが溺愛してきます!?



 翌日。朝10時。
 もしかして昨日のことは夢?と思いながらも、私は化粧をしていた。
 こんなにきっちりと化粧をするのはいつぶりだろうか。何年か前に出席した授賞式以来かもしれない。

「氷上さん、本当に来るのかな……」

 好きだなんて言ってくれたけれど、きっと私にすごく気を使ってくれたに違いない。

「私がっ……恋愛描写ド下手恋愛小説家なばっかりに……っ」

 自分の無能加減を悔やんでいると、あっという間に約束の11時になり、私の気も知らずに今日も玄関のチャイムが軽快に鳴った。

「は、はい!」

 慌てて出ると、そこにいたのは当然氷上さんだった。
 ほ、本当に来た……!

「おはようございます、美琴さん」
「おっ、お、おはようございます……っ」
「では、行きましょうか」
「は、はい!」

 どうやら夢でも妄想でもなく、今日氷上さんとデートするのは本当らしい。
 氷上さんの横を右手と右足を同時に出して歩きながら、ちらりと彼を横目で窺う。
 今日の氷上さんは普段のぴしっとした高そうなスーツ姿ではなく、薄手のジャケットにパンツ姿だった。
 すらっと背の高い氷上さんによく似合っていて、でもきっとどんな服でも着こなしてしまうのだろうなぁ、とそんなことを思っていると、氷上さんとばっちり目が合った。
 内心「ひぃっ」と思っていると、氷上さんは私を見て優しく微笑んだ。

「美琴さん、今日のワンピースも可愛いですね」

 小花が散りばめられた長袖の秋物のワンピースは、紺色で派手でなく、自分で言うのもなんだけれど私に合う落ち着く色だった。

「えっ、あ、ありがとうございます……」

 私はぺこりと小さく頭を下げる。

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