転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「リサ。私の傍から離れてはいけないよ」
「わかってるわ。壁際だし、ここなら大丈夫よ」
ヘンリックは油断なく周囲を見まわし、私はそんなヘンリックの背に隠れるように立った。
もしパニックが起きて大勢が一度に出口に詰めかけるようなことがあっても、この位置なら人の波にのまれるようなことにはならない。
もうすぐだ。
もうすぐ、ここで大事件が起こる。
「おい! なんだあれは⁉」
ダンスホールから誰かの声が響いだのは、私がそう思って気を引き締めた時だった。
声につられて視線を向けると、空中に黒い塊がふわふわと浮かんでいるのが見えた。
言うまでもなく、エルヴィンの魔力だ。
みるみる大きくなっていく黒い塊から着飾った人々が悲鳴を上げて遠ざかり、代わりに複数の衛兵が駆けつけて取り囲んだ。
黒い塊は大きくなりながらゆっくりと高度を下げ、床についたところで今度は小さくなり始めた。
ゆらゆらと不定形な形の黒い塊は、小さくなるにつれはっきりとした形をもつようになっていく。
「ひっ……!」
「あれは、翼か⁉」
「もしかして……魔族⁉」
大きな漆黒の翼がばさりと音をたてて広がると、周囲に魔力の残滓をまき散らした。
黒い塊の中から、先祖返りの姿になっているエルヴィンが姿を現したのだ。
漆黒の大きな翼、炯々と輝く金色の瞳、そして頭には深紅のねじれた角。
底冷えするような威圧感を放つ異形の姿。
なかなか上出来な魔王コスプレだ。
角は私の手作りカチューシャなのだが、あれがあることにより魔王っぽい迫力が増していると思う。
「わかってるわ。壁際だし、ここなら大丈夫よ」
ヘンリックは油断なく周囲を見まわし、私はそんなヘンリックの背に隠れるように立った。
もしパニックが起きて大勢が一度に出口に詰めかけるようなことがあっても、この位置なら人の波にのまれるようなことにはならない。
もうすぐだ。
もうすぐ、ここで大事件が起こる。
「おい! なんだあれは⁉」
ダンスホールから誰かの声が響いだのは、私がそう思って気を引き締めた時だった。
声につられて視線を向けると、空中に黒い塊がふわふわと浮かんでいるのが見えた。
言うまでもなく、エルヴィンの魔力だ。
みるみる大きくなっていく黒い塊から着飾った人々が悲鳴を上げて遠ざかり、代わりに複数の衛兵が駆けつけて取り囲んだ。
黒い塊は大きくなりながらゆっくりと高度を下げ、床についたところで今度は小さくなり始めた。
ゆらゆらと不定形な形の黒い塊は、小さくなるにつれはっきりとした形をもつようになっていく。
「ひっ……!」
「あれは、翼か⁉」
「もしかして……魔族⁉」
大きな漆黒の翼がばさりと音をたてて広がると、周囲に魔力の残滓をまき散らした。
黒い塊の中から、先祖返りの姿になっているエルヴィンが姿を現したのだ。
漆黒の大きな翼、炯々と輝く金色の瞳、そして頭には深紅のねじれた角。
底冷えするような威圧感を放つ異形の姿。
なかなか上出来な魔王コスプレだ。
角は私の手作りカチューシャなのだが、あれがあることにより魔王っぽい迫力が増していると思う。