転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「我がバルテン王国を滅ぼすつもりか」
そう問うたのは、カリナの証言では魔王が国を滅ぼそうとして襲ってくるからなのだが、当然ながらそんなつもりはないエルヴィンは首を横に振った。
『そんな無意味なことはしない』
「では、なにが目的だ」
『バルテン王国の聖女を我が花嫁とする』
「は、花嫁⁉」
陛下だけでなく、私とヘンリック以外の会場にいる全員が目を剥いた。
「我が国の聖女というのは、称号でしかないのだが」
『来月の三回目の水の日、今と同じ時間に聖女をこの場に迎えに来る』
「しかし」
『大人しく聖女を差し出せ』
エルヴィンがばさりと翼を広げると、ぶわっと魔力が混ざった突風が会場を吹き抜けて、あちこちで悲鳴が上がった。
ヘンリックが額に冷や汗をかいている。
騎士である彼は、エルヴィンがその身に秘める力の強大さを肌で感じているのだろう。
「わ、わかった。聖女を差し出すと約束しよう」
国王陛下がそう言うと、エルヴィンの体がふわりと宙に浮いた。
右手をかざすと、掌から黒い靄が飛び出して塊になり、彼はその中に飛び込んだ。
しばらく空中に留まっていた黒い塊は、ふわふわと解けて溶けるように跡形もなく消え去った。
それを見届けてから、私とヘンリックは無言で顔を見合わせた。
そう問うたのは、カリナの証言では魔王が国を滅ぼそうとして襲ってくるからなのだが、当然ながらそんなつもりはないエルヴィンは首を横に振った。
『そんな無意味なことはしない』
「では、なにが目的だ」
『バルテン王国の聖女を我が花嫁とする』
「は、花嫁⁉」
陛下だけでなく、私とヘンリック以外の会場にいる全員が目を剥いた。
「我が国の聖女というのは、称号でしかないのだが」
『来月の三回目の水の日、今と同じ時間に聖女をこの場に迎えに来る』
「しかし」
『大人しく聖女を差し出せ』
エルヴィンがばさりと翼を広げると、ぶわっと魔力が混ざった突風が会場を吹き抜けて、あちこちで悲鳴が上がった。
ヘンリックが額に冷や汗をかいている。
騎士である彼は、エルヴィンがその身に秘める力の強大さを肌で感じているのだろう。
「わ、わかった。聖女を差し出すと約束しよう」
国王陛下がそう言うと、エルヴィンの体がふわりと宙に浮いた。
右手をかざすと、掌から黒い靄が飛び出して塊になり、彼はその中に飛び込んだ。
しばらく空中に留まっていた黒い塊は、ふわふわと解けて溶けるように跡形もなく消え去った。
それを見届けてから、私とヘンリックは無言で顔を見合わせた。