転生小説家の華麗なる円満離婚計画

「第二王子殿下にご挨拶申し上げます。
 本日は時間をつくってくださいまして、誠にありがとうございます」

「いらっしゃい、フューゲル夫人。
 僕相手に堅苦しくする必要はないよ」

 王城のサロンでカーテシーをする私に、第二王子殿下気さくに声をかけた。

 あの夜会の数日後、私はヘンリックを通じ第二王子殿下に面会依頼を送った。
 そして、それはあっさりと許可され、こうしてヘンリックと一緒にサロンに招かれたのだ。

「それで?
 僕に話があるってことだったけど」

「はい。第二王子殿下に、折り入ってお願いしたいことがあるのです」

 私はにっこりと笑って、殿下の顔を真正面から見た。

「私を、バルテン王国の聖女にしていただきたいのです」

 殿下は大きく目を見開き、まず私の隣にいるヘンリックを見た。
 ヘンリックが頷くと、また私を見て、それからぱちぱちと瞬きをした。

「ええと……夫人は、この前の夜会に参加してたよね?」

「はい。殿下にもご挨拶させていただきました」

「あの時の、アレも……見てた、よね?」

「はい。最初から最後まで、しっかり目撃しましたわ」

「聖女になるって……それがどういう意味か、わかってるんだよね……?」

「もちろんでございます。
 私は、魔王様の花嫁になりたいのです」

「ええぇぇ……リック、夫人は正気なの?」

「リサはどこまでも正気ですよ」

 にこやかに応える友人兼護衛騎士に、殿下は頭を抱えた。

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