転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「殿下にこのような話をするのは、不敬にあたるのかもしれませんが……
私の作品は、つまるところは私の性癖を文字にしたようなものなのです」
「せいへき」
「なにが言いたいかといいますと……私はこの作品に出てくるような獣人だったり、人間に変身した竜だったり……なんといいますか、そういった意味で普通ではない男性が好みなのです」
「そ、そうなんだね」
「それで……私、あの夜会で……魔王様に恋をしてしまったのです」
赤らめた頬に手をあて恥じらう私を殿下は化け物を見るような目で見て、私の隣のヘンリックが頷いて見せると額を片手で覆って天を仰いだ。
「夫人……僕の頭では、理解が追いつかないよ……」
殿下は、私たちがもうすぐ円満離婚をして、ヘンリックとマリアンネが結婚する予定であることを理解し受け入れてくれている。
柔軟な考えができる方のはずだが、それでも私が魔王に恋をしたというのは信じ難いようだ。
「……本気で、魔王の花嫁になりたいと思ってるの?」
「魔王様は、その気になればあの場にいた全員を殺すことができたはず。
それなのに、立ち向かった騎士たちは気絶させるられただけで、ほとんど無傷だったと聞いております。
きっとお優しい方なのだと思います」
「う~ん、そうかな……」
「見た目は怖いけど、実は優しいっていうギャップがツボなのです。
それに、とてもお強いですし、大きくてきれいな翼もあって……控え目に言って最高ではありませんか!」
「夫人は、ツボも独創的なんだね……」
「だからこそ、こういった小説を書くことができるのですわ」
「まあ、そういわれたらそうかなって気もするけど……
リック、夫人は本当に正気でこんなこと言ってるんだよね?」
「はい。妻はどこまでも正気です」
「剣に誓える?」
「もちろんです。私の首を賭けても構いませんよ」
「マジか……」
殿下は物凄く複雑な顔をした。