転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「リックが契約結婚するって聞いた時は、どうなることかと心配したんだよ。
 きみのような相手だから、リックは受け入れたんだとやっと納得できた」

「リサは、私にとって最高の契約結婚相手ですよ」
 
「私も、ヘンリック様と契約結婚できてとても幸運だったと思っております」 

 殿下が私の話を頭から否定するような方でなくて助かった。
 もし聖女の称号が得られなかったら、その時はその時でやりようはあるのだが、できればちゃんと聖女として認められたいと思っている。

 それからの殿下の行動は早かった。
 すぐに国王陛下に私が伝えたことを奏上し、ハイデマリー嬢も交えて乾燥食品製法の検証にとりかかったそうだ。

 その結果、私は十日後に王城に呼び出され、国王陛下を始めバルテン王国の首脳陣の前で私がユカリ・シキブであることと、聖女になりたい理由をプレゼンした。
 
 その際、ヘンリックとは三年で円満離婚することを前提とした契約結婚であることも正直に明かした。
 そうした理由として、生家であるキルステン伯爵家で冷遇されていたからとこれまた正直に言うと、全員が気の毒そうな顔をした。
 
 現在の生家がどのような状況かは知らないが、これでもっと立場が悪くなることは確定だ。
 私はこうして、母と弟だけでなく父にも見事にざまぁをかましたのだ。

 ヘンリックが薔薇色の髪の女の子を探しているのは一部では有名な話だったようで、私を通じて偶然出会えたことを皆が喜び、全員がマリアンネとの再婚を祝福してくれた。
 それだけヘンリックの働きぶりが評価されているということだ。

 これで、マリアンネ後ろ指をさされたりすることはないだろう。

 魔王の花嫁となった後の私の身を案ずる声もあったが、魔王はほとんど誰も傷つけることはなく、あれだけの威圧感を放ちながらも殺気も皆無だったことから、おそらく私に酷いことはしないだろうという結論になった。
 
 実際問題として、あんな強大な力を持つ存在を野放しにはできない。
 バルテン王国側からしたら、安全装置としての花嫁をなんとしてでもこちらから押し付けたいくらいなのだ。
 自ら進んで魔王の花嫁になりたがる女性がいるなら、反対する理由などないということで、それから数日後に私は正式に聖女の称号を授与されることとなった。
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