転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「つまり……私が、ヒロインってことよね……?」

 頬を抓ってみると、しっかり痛みを感じた。
 夢じゃない。

 日本人が小説や漫画の世界に召喚されたり転移したりする物語はたくさんあったが、まさかそれが私の身に起きるなんて。

 そして、それがよりによって、年齢制限あり漫画『救国の聖女は淫らに愛される』だなんて。

「最高だわ……」

 だって、ヒロインである聖女カリナは、四人もの極上イケメンから溺愛され、逆ハーレムを築くのだ。
 ヒロインとイケメンが繰り広げる詳細に濃厚に描写されたそういう場面を何度も繰り返し呼んだから、内容もはっきり覚えている。
 あれと同じことが、私の身にこれから起きるわけだ。

 信じられない……でも、どう考えても最高だ。
 これもきっと、可愛くて日頃の行いがいい私への神様からのプレゼントなのだ。

「やったわ! 逆ハーレムよ!」

 飛び上がってガッツボーズをとったところで、私は自分がパシャマ姿だということに気が付いた。
 
「侵入者って女なのか⁉」
 
「動くな!」

 ドヤドヤと駆けこんできた衛兵だと思われる男性たちに取り囲まれ、私はアブラッハの庭から連れ出された。
 これも、漫画の冒頭そのままなので、私は一切抵抗せず大人しく従った。

 入れられた牢の中で、私はワクワクしながら待っていた。

 もうすぐ、最推しヘンリックに会えるだからだ。

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