転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「お願い、治って……!」

 漫画でカリナは、そう言いながら祈ることで魔法をかけていた。
 これで魔法が発動しなかったら、私の立場はかなり危うくなる。
 その危機感に内心震えながら必死で祈ると、掌からするっと何かが抜けていくような感じがして、内出血の痕がぱっと弱い光を放った。

 その光が数秒で消えると、内出血の痕は跡形もなくなっていた。 

「ふぅん、回復魔法が使えるっていうのは本当なようだね」

 アンゼルム大公は衛兵の腕を見て呟くと、ヘンリックに視線を向けた。

「どうする? きみが引き受けるかい?」

「大公、申し訳ありませんが……私にはどう考えても無理です」

 険しい顔で、首を横に振るヘンリック。
 なにが無理なのだろう?

「そうだろうね。言ってみただけだよ。
 大丈夫、最初から私が引き受けるつもりだったから」

 そう言うと、アンゼルム大公は私に手を差し出した。

「カリナ、だったね。
 きみの面倒は私がみることになった。
 悪いようにはしないから、遠慮なく頼ってほしい」

「は、はい! よろしくお願いします!」

 私は飛びつくようにアンゼルム大公の手をとった。

 よかった、これで牢に入れられることも、拷問されることもなくなった。

 とりあえず、アンゼルム大公から攻略してしまおう!
 
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