転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 私は『推し』という概念について説明した。
 なぜ他の三人ではなく、ヘンリックが推しなのかという説明もした。

 外見も一番好みだが、とにかく愛が重いのと、他の三人への嫉妬に苦しみながらもカリナのために逆ハーレムを受け入れるという下りが性癖にグサグサと刺さったのだ。
 他の三人はカリナとの関係が深まると抱えていた闇が消えていくが、ヘンリックだけは別の闇を抱えるようになり、嫉妬で胸を焼かれながら泣きそうな顔でカリナを求める。
 それがまた、すっっっごくイイのだ……

 魔王のことと、私とアレコレすると各種能力が上昇するというのを伝えたら、生真面目な騎士であるヘンリックは嫌々ながら私と関係を持とうとするだろう。

 そんなのは嫌だ!

 私は、ただ体の関係がほしいだけじゃない。
 激重愛を注がれながらドロドロになりたいのだ。

 漫画の中のカリナみたいに!

 今は私がヒロインのカリナなのだから、それが可能なはずだ。

 魔王が襲来するのはまだ先の話。
 それまでに、ヘンリックの心を手に入れなくては!

 私は可愛いんだから、絶対大丈夫。
 今までだって、何人もの既婚者を夢中にさせてきたのだから。

 ヘンリックが私のものになるのも、時間の問題だ。

「私、ヘンリック様のこと諦めませんから!
 絶対、私のことを好きにさせてみせます!
 だって、私はこの物語のヒロインで、聖女なんだから!」

 ついでに、ヘンリックと仲がよさげな第二王子も逆ハーレムに入れてあげよう。
 私ってば優しい♪

「いや、すごいな……面白そうだと思って会ってみたけど、想像以上だね」

「私は耳が腐りそうですよ」

 第二王子とヘンリックが小声でそんなことを言っているのは、やる気に燃えている私の耳には入らなかった。

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