転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 私の庇護者となったアンセルム大公は、きれいな部屋を用意しドレスとかを買ってくれた。
 専属のメイドまでいて、とても快適な暮らしだった。

 多忙とのことであまり会うことはできないが、たまに一緒にお茶をしてくれたりする。
 甘いマスクの女たらし系イケメンという設定のとおり、女性の扱いにとても慣れているのがわかる。
 すらりとした長身の彼も悪くないが、やっぱり体をしっかり鍛えているヘンリックの方が好みだ。
 
 たまにアブラッハの魔物のこととかを尋ねられるから探りを入れられているんだろうと思うが、私が知っているのは漫画に書いてあったことだけだ。
 話せることはもうとっくに話してしまったし、これ以上情報を流す気はない。

 王城内は自由に動いていいと言われているため、私はヘンリックを探しては突撃した。
 
 なかなか靡いてくれないが、邪険にされることもない。
 こんなに可愛い私に好意を向けられて、絆されない男なんているはずがない。

 もう少しで、ヘンリックが手に入る。
 そうしたら、第二王子が陥落するのもすぐのはずだ。
 
 本当は第一王子が逆ハーレム構成員なのだが、妊娠中の奥さんにべったりだそうだから、物分かりのいい私は第二王子で妥協してあげるのだ。

 今はまだだれも信じてくれないが、ヘンリックが私のものになったら、私は聖女だと認められるのは間違いない。
 恋の駆け引きは楽しいが、早くヘンリックがほしいな。

 そう思いながら、その日も鍛錬場にいるヘンリックを見つけて駆け寄ったのに、なんとヘンリックの隣には妻だという女がいた。

 銀髪と紫の瞳のキツそうな顔をした、可愛さでは私の足元にも及ばない女だ。

 こんなのが私のヘンリックの妻だなんて、許せない!
 絶対に私の方がお似合いなのに!

< 123 / 147 >

この作品をシェア

pagetop