転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 さらに許せないのは、ヘンリックだけでなくすっごくイケメンな侍従まで従えているということだ。

 ヘンリックみたいな華やかさはないけど、野性味があって雄としての生命力が強そうな、そんな独特な空気に私は目を奪われた。

 ズルい! なんでこの女ばかっかり!

 私がヒロインなのに、全然シナリオ通りにならないことに内心苛立ちが溜まっていた私は、つい口を滑らせてしまったのだった。

「私は、本当に本物の聖女なんですぅ!
 だって、この国を救えるのは私だけなんですからぁ!」

 その次の瞬間、周囲の空気がガラリと変わった。

「どういう意味だ? なにから救うというんだ」

 険しい顔のヘンリックに問い詰められる。
 しまったと思ったが、一度口から出てしまった言葉を取り消すことはできない。

「答えないなら、私が手ずから拷問にかけてやろう。
 慈悲などかけず、最初からこうすればよかったんだ。
 おまえの望み通り、仲良くなろうじゃないか。牢獄でな」

 私は引きずられるように連行され、最初の時と同じ牢獄に放り込まれてしまった。

「そんな……拷問なんて嘘でしょ、ヘンリック様!」

 涙目の私を無視して、彼は看守たちにあれこれと指示をだしている。

 看守の一人が牢に入ってきて、なんとか逃げようとする私を捕まえると壁に取り付けられている鎖から伸びた手錠のようなものをつけられた。
 私が動くと、ガチャガチャと錆の浮いた鎖が音をたてる。

「やだ……やだぁ……」

 台が運び入れられ、その上にペンチや小さなナイフや、よくわからない道具が名並べられた。
 
「それ、なに……?」

「拷問するための道具に決まっているだろう」

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