転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 私はヘンリックにエスコートされ、この前の夜会の会場だった広間へ向かった。

 広間の周囲は、騎士団を総動員したと思われる人数の騎士によりぐるりと取り囲まれ、厳戒態勢となっていた。
 カリナによるととっくに亡くなっているはずの、厳めしい顔をした総騎士団長の姿も見える。
 
 そん中を花嫁衣裳を纏いしずしずと歩く私に、皆の注目が集まった。

「リック、夫人」

 声をかけてきたのは、第二王子殿下だ。

「ルーカス様」

「第二王子殿下にご挨拶申し上げます」

 並んで礼をとる私たちに、殿下はなんとも複雑な顔をした。

「夫人……本当に、いいんだね?」

「はい。覚悟は決まっております。
 私はきっと幸せになりますから、心配なさらないでください」

「正直、夫人がいてくれて助かった。
 王家を代表して礼を言うよ。
 ありがとう、夫人。元気でね」

 殿下意外の王族は大事をとって王都の外に避難しているとのことで、ここでは彼が最高位なのだ。

「ではリック。こっちも頼むよ」

 そんな殿下が示した先には、私よりも簡素ながらきちんとした花嫁衣裳を着せられたカリナがいた。
 ただし、腕も足も雁字搦めに縛られ、口には猿轡までしてある。

「んむうぅぅ~!」

 なにか言いながら暴れているようだが、当然ながらなにを言っているかわからない。
 
 もしかしたら自称聖女が魔王の求める花嫁である可能性もあるということで、カリナもこの場に連れてこられたのだ。
 
 魔王の花嫁なんて嫌だと泣きわめいていた彼女は、あの夜会以降何度か逃亡を謀ったそうだが毎回あっさり捕まり、最後は座敷牢のようなところに監禁されていたそうだ。
 
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