転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 エルヴィンが私を振り返り、小さく頷く。
 カリナは無事に日本へと逆転移されたようだ。

 私も笑顔で頷くと、彼は私を軽々と抱きかかえて固唾をのんでこちらを見ている騎士団に目を向けた。

『偽聖女は、本来あるべき場所に戻した。
 バルテン王国の聖女は、我が花嫁一人だけだ』

 膨大な闇属性魔力を持つ彼だからそんな非常識なことも可能なのだ。
 とはいえ、正直なところできるかどうかは賭けだったのだが、これも彼が生まれ持った能力に胡坐をかくことなく、地道に鍛錬を積み重ねた結果だ。
 
 エルヴィンはとても優秀で頼もしくて、誰よりもカッコイイのだ。

 大きな翼が羽ばたき、私たちはふわりと宙に舞い上がった。

「皆様、お元気で!
 私は魔王様と幸せになりますわ~!」

 大きく手を振ると、ヘンリックと第二王子殿下を中心に半数ほどの騎士たちが手を振り返してくれた。

 今日をもって、私とヘンリックの離婚は国王陛下の名のもとに正式に成立している。
 最後にいろいろと予想外なことが起こったが、当初の予定通り三年で円満離婚が叶ったのだ。

 エルヴィンは私を大切に抱えて飛ぶ姿を見せつけるように王城の上を三度ほどぐるりと回って、それから空高く舞い上がり宵闇に紛れて姿を消した。

 こうして、私とエルヴィンはバルテン王国の王都を去ったのだった。
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