転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 俺はお嬢を抱えて夜空を駆け、王都の外の林の中にある数日前から借りているコテージに向かった。
 ここに俺たちの荷物が運び込んであるのだ。

「はぁ、やっと終わったわね。
 ありがとう、エル。
 全部あなたのおかげよ」

「俺は、俺にできることをしただけだ。
 礼など言う必要はない」

「そんなわけにはいかないわ。
 私が計画したことだけど、結局はあなたの能力ありきの計画だったんだもの」

「俺のこの能力は、お嬢のためのものだ。
 いくらでも好きに使っていいんだぞ」

「もう、エルったら。そんなことしないわよ」

 言いながら、お嬢は髪をまとめていたヘアピンを次々と外してテーブルに置いていく。
 銀色の髪がさらさらと背中に流れるのを見ていると堪らなくなって、小さな体を後ろからぎゅっと抱きしめた。

「エル?」

「お嬢。今まで溜めてあった俺へのご褒美を、これから全部まとめてもらうことにする」

「え? ご褒美?」

「王城の広間での誓い……俺は、本気だからな」

 今日から俺はお嬢のもので、お嬢は俺のものなのだ。

 もちろん、無理強いするつもりはない。
 だが、逃がすつもりもない。

 これからじっくり時間をかけて、お嬢の全てを俺のものにするのだ。
 
 マリアンネを口説くヘンリックを間近で見ていたから、どうすればいいかはだいたいわかる。

「え、える……?」

「愛しているよ、クラリッサ。
 これからも、ずっと一緒だ」

 俺は生まれて初めて、銀色の髪に口づけをした。
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