転生小説家の華麗なる円満離婚計画
二人でほっこりしていると、ドアがノックもされずに開かれ、小さな女の子が飛び込んできた。
「おじさま! おばさま!」
ストロベリーブロンドにエメラルドの瞳をしたこの美幼女は、三歳になったばかりの私たちの姪だ。
「こら、ビアンカ!
お姉様はお腹に赤ちゃんがいるんだから、静かにしなさいって言ってるでしょう」
長女を追いかけて、マリアンネも部屋に入ってきた。
「お姉様、体調はいかがですか?」
「ええ、私は大丈夫よ。
それより、さっき最終章が書きあがったの。
後ででいいから、誤字脱字チェックをお願いね」
「はい! お任せください!」
旅先で妊娠が発覚した私は、そのことを手紙に書いてマリアンネに送ったところ、「出産は落ち着いた環境でしたほうがいいから、戻ってきてください!」とヘンリックとの連名での手紙が届き、それなら甘えさせてもらおうとバルテン王国の王都に戻ることにした。
かつては私たちも住んでいた勝手知ったる屋敷で、数か月前からお世話になっている。
出産して落ち着いてからは、この近所に家を買うつもりだ。
四年も旅を続けたから、もうそろそろ落ち着こうと思っていたところなので、ちょうどいいタイミングではあったのだ。
ユカリ・シキブの正体と、魔王の花嫁になったことはあの当時多くの新聞に取り上げられ世間を騒がせていたが、ある程度騒ぎが下火になってから出版社に連絡をとったところ、驚かれつつもそれまでと変わらず担当を続けてくれることになった。
それからわずか三か月後、『辛党聖女は甘党魔王様の胃袋を掴みます』という新著が発刊された。
お酒と料理が好きな聖女が、見た目は怖いけど甘党でちょっと気弱な魔王様の花嫁になり、スローライフを楽しみながら幸せに暮らすという内容だ。
もちろん、それも私の計画に沿ってのことだ。
私は生贄になったのではなく、幸せになったのだということをアピールするため、そういった内容の原稿をあらかじめ準備しておいたのだ。
そして私の狙い通り、新著は大いに話題となり私の売り上げ記録を更新しただけでなく、ヘンリックを非難する人は誰もいなくなった。
それから無事にヘンリックとマリアンネは正式な夫婦となり、翌年にはビアンカが生まれた。
「おじさま! おばさま!」
ストロベリーブロンドにエメラルドの瞳をしたこの美幼女は、三歳になったばかりの私たちの姪だ。
「こら、ビアンカ!
お姉様はお腹に赤ちゃんがいるんだから、静かにしなさいって言ってるでしょう」
長女を追いかけて、マリアンネも部屋に入ってきた。
「お姉様、体調はいかがですか?」
「ええ、私は大丈夫よ。
それより、さっき最終章が書きあがったの。
後ででいいから、誤字脱字チェックをお願いね」
「はい! お任せください!」
旅先で妊娠が発覚した私は、そのことを手紙に書いてマリアンネに送ったところ、「出産は落ち着いた環境でしたほうがいいから、戻ってきてください!」とヘンリックとの連名での手紙が届き、それなら甘えさせてもらおうとバルテン王国の王都に戻ることにした。
かつては私たちも住んでいた勝手知ったる屋敷で、数か月前からお世話になっている。
出産して落ち着いてからは、この近所に家を買うつもりだ。
四年も旅を続けたから、もうそろそろ落ち着こうと思っていたところなので、ちょうどいいタイミングではあったのだ。
ユカリ・シキブの正体と、魔王の花嫁になったことはあの当時多くの新聞に取り上げられ世間を騒がせていたが、ある程度騒ぎが下火になってから出版社に連絡をとったところ、驚かれつつもそれまでと変わらず担当を続けてくれることになった。
それからわずか三か月後、『辛党聖女は甘党魔王様の胃袋を掴みます』という新著が発刊された。
お酒と料理が好きな聖女が、見た目は怖いけど甘党でちょっと気弱な魔王様の花嫁になり、スローライフを楽しみながら幸せに暮らすという内容だ。
もちろん、それも私の計画に沿ってのことだ。
私は生贄になったのではなく、幸せになったのだということをアピールするため、そういった内容の原稿をあらかじめ準備しておいたのだ。
そして私の狙い通り、新著は大いに話題となり私の売り上げ記録を更新しただけでなく、ヘンリックを非難する人は誰もいなくなった。
それから無事にヘンリックとマリアンネは正式な夫婦となり、翌年にはビアンカが生まれた。