転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「おばさま! おえかきしましょう!」

 エルヴィンの膝によじ登ったビアンカは、私にクレヨンの箱を差し出した。

「ええ、そうね。
 なにを描きましょうか」

「おはなをかいて! あかいおはな!」

 このクレヨンは私がお土産として買ってきたもので、最近のビアンカのお気に入りなのだ。

 私は赤と緑のクレヨンで、頼まれたとおりに赤い花を描いた。

「おばさま、それなぁに?」

「なにって、赤いお花よ。
 そう見えるでしょ?」

「みえない~~!」

 ビアンカは小さい頃のマリアンネに似た可愛い顔を不満そうに顰めた。

「……悪いが、俺にも赤い花には見えない」

「お姉様……相変わらず絵は下手なんですね」

 エルヴィンとマリアンネにもそう言われてしまった。

「どこからどう見ても、赤いお花じゃないの!」

 私がむっと頬を膨らませたところで、ヘンリックがやってきた。

「なんの騒ぎ?」

 その腕の中には、一歳になったばかりの甥ライナーがいる。
 父親と同じ色合いの、天使のように可愛い男の子だ。

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