転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「おとうさま、おかえりなさい!」

 もう一人の天使が駆け寄ると、ヘンリックはライナーを抱いていない方の腕でひょいと抱き上げた。

「ただいま、ビアンカ。なにをしていたの?」

 家庭を築き幸せいっぱいのヘンリックは、さらにその美貌に磨きがかかった。
 出世して近衛騎士団副長になり、騎士服にはかつてはなかった階級章が光っており、美しさの中に貫禄も漂わせるようになっている。 

 当然ながら凄まじいほどにモテるのだが、彼は今も昔もこれからもマリアンネ一筋だ。
 幸いなことに彼が仕えている第二王子殿下も似たような感じなので、秋波を送られまくる以外の不都合は特にないのだそうだ。

「おばさまにえをかいてもらいました!」

 ビアンカは手に持っていた紙をヘンリックの顔の前に広げた。

「これは……異国にいる魔獣かな? 見たことがない形だね」 
 
「もう、リックまでなにを言っているの?
 魔獣なんかじゃないわよ! 赤いお花を描いたのよ!」

「あ、赤いお花……?」

 ヘンリックが怪訝な顔で首を傾げると、その腕に抱かれた二人の天使もそれを真似て首を傾げる。

「うーん……前衛的すぎて、私にはよくわからないよ」

「なんでよぉ! どこからどう見たって、普通に赤いお花じゃないの!」

 結局誰も私の味方にはなってくれず、むくれる私の肩をエルヴィンが抱き寄せた。

「大丈夫だ、クラリッサ。
 おまえがどれだけ絵が下手くそでも、俺の愛は変わらないから」

「それって、慰めになってないわよ!」

 私が叫ぶと皆が笑って、なんだかつられて私も笑ってしまった。

 その翌月、私は元気な男の子を生み、さらにその二年後に次男が生まれる。

 ヘンリックとマリアンネの間にももう一人女の子が生まれて、子供たち同士も仲良く育っていくことになるのだった。
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