転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「そんなに強いのなら、是非手合わせを願いたいものですね」
「私たちが契約結婚をした暁には、そんな機会もあるでしょう。
彼とそこにいるメイドは連れて行くつもりですから」
実際に手合わせをしたら、ヘンリックはきっと驚くことだろう。
それくらいエルヴィンは強い。
「さて、では早速ですが、私に前世の記憶がある証拠をお見せしましょう」
私が合図をすると、マリーが予め準備しておいたものをテーブルに並べた。
「これは?」
「私が書いた小説ですわ」
ヘンリックはまたも驚きに目を瞠った。
「これが四年前に書いたデビュー作です。
獣の耳と尻尾がある獣人たちが住む国の王様に、人間の国から嫁いで王妃になった令嬢が主人公になっています。
獣人というの新しいジャンルを創り出したと話題になりました。
それから、これは十回も重版になった私の本の中では一番有名な作品です。
竜が人間の国のお姫様に恋をして、人間に化けてお姫様に会いに行って仲良くなるんですど、竜が少し離れている間に隣の国がお姫様のいる国に攻め込んできて、お姫様が攫われてしまうんです。それで竜が怒って」
「待って、待ってください」
慌てた様子のヘンリックが私を遮った。
「読んだことはありませんが、いくら私でもその本は知っています。
歌劇になったくらい有名ではありませんか」
「そうなんです。
有難いことに、歌劇団のオーナーの目に留まったんです。
おかげで売上がぐんと伸びましたわ」
「この作者……ユカリ・シキブというのは、クラリッサ嬢なのですか?」
「はい。
前世の私の名前と、とても有名な作家の名前からつけたペンネームです」
日本人だった頃の私の名は、松島紫だった。
烏滸がましいとは思いつつ、同じくらい有名になれたらなという希望もこめて、紫式部と私の名をもじったペンネームにしたのだ。
「私たちが契約結婚をした暁には、そんな機会もあるでしょう。
彼とそこにいるメイドは連れて行くつもりですから」
実際に手合わせをしたら、ヘンリックはきっと驚くことだろう。
それくらいエルヴィンは強い。
「さて、では早速ですが、私に前世の記憶がある証拠をお見せしましょう」
私が合図をすると、マリーが予め準備しておいたものをテーブルに並べた。
「これは?」
「私が書いた小説ですわ」
ヘンリックはまたも驚きに目を瞠った。
「これが四年前に書いたデビュー作です。
獣の耳と尻尾がある獣人たちが住む国の王様に、人間の国から嫁いで王妃になった令嬢が主人公になっています。
獣人というの新しいジャンルを創り出したと話題になりました。
それから、これは十回も重版になった私の本の中では一番有名な作品です。
竜が人間の国のお姫様に恋をして、人間に化けてお姫様に会いに行って仲良くなるんですど、竜が少し離れている間に隣の国がお姫様のいる国に攻め込んできて、お姫様が攫われてしまうんです。それで竜が怒って」
「待って、待ってください」
慌てた様子のヘンリックが私を遮った。
「読んだことはありませんが、いくら私でもその本は知っています。
歌劇になったくらい有名ではありませんか」
「そうなんです。
有難いことに、歌劇団のオーナーの目に留まったんです。
おかげで売上がぐんと伸びましたわ」
「この作者……ユカリ・シキブというのは、クラリッサ嬢なのですか?」
「はい。
前世の私の名前と、とても有名な作家の名前からつけたペンネームです」
日本人だった頃の私の名は、松島紫だった。
烏滸がましいとは思いつつ、同じくらい有名になれたらなという希望もこめて、紫式部と私の名をもじったペンネームにしたのだ。