転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「それで?
 私が前世の記憶を持っていると、信じていただけましたでしょうか?」

 今日のヘンリックの訪問は、それを確かめるのが目的だった。

 正直なところ、『新しいジャンルの小説』と『目新しくて美味しい料理』だけで、そんな突拍子もないことを信じてもらえるとは思っていない。

 ここで大切なのは、本当に前世の記憶があるかということではなく、私がどういう人物であるかということを理解してもらうことなのだ。
 少なくとも、それはある程度成功しているとはずだ。

「信じたい、と思っていますよ。
 かなり説得力がありましたからね。
 そうでなくても、きみがとても優秀であることはよくわかりました。
 契約結婚する相手として申し分ないということもね」

 私の意図はしっかりと伝わっているようで、ヘンリックも微笑みを返してくれた。

「次にお会いする時は、契約結婚をするにあたってのお互いの条件をすり合わせる、ということでいかがでしょう」

「ええ、そういたしましょう!」

 契約結婚に前向きになってくれているヘンリックに、私はやや前のめり気味になりながら応えた。

 彼が私の本を読んでみたいというので、特に有名なものを三冊ほど進呈することにした。
 
「今日はお招きいただきありがとうございました。
 驚くことばかりでしたが、久しぶりに楽しい時間を過ごすことができました」

「こちらこそ、楽しかったですわ。
 またご招待いたしますわね」

「是非お願いします」

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