転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 去って行く馬車を見送りながら、ヘンリックに出会うきっかけをくれた弟に、私は生まれて初めて感謝した。

「それで? どう思った?」

 私室に戻ってから、私はエルヴィンとマリアンネに尋ねた。

「思ったより素敵な方でしたわね。
 お姉様の隣に立っても、あの方なら見劣りしないでしょう」

 相変わらずマリアンネの私に対する贔屓目は果てしない。

「腕が立つ騎士というのは本当のようだ。
 ただし、俺よりは弱い」

 エルヴィンはというと、マリアンネより現実的ではあるが、その視点はどうなのかと思う。

「お兄様より強い人なんて、この国にはいないと思いますわよ」

「そんな人じゃないとダメだというなら、他の大陸にでも行くしかないわね」

 私とマリアンネに、エルヴィンはそうではないと首を横に振った。

「あの男なら、誰かがお嬢を社会的に害しようとしたら守ってくれるだろう。
 それだけの地位も力もある。
 だが俺よりは弱いから、俺ならお嬢をあの男から物理的に守ることができる」

 過保護なエルヴィンに、マリアンネも大きく頷いた。

「立場もあって、ある程度強くて、でもお兄様よりは弱い。
 そういう意味でも、お姉様の契約結婚相手にはちょうどいいと思いますわ」

 私は二人を交互に見た。
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