転生小説家の華麗なる円満離婚計画

 あれは、私が七歳だった時のことだ。
 久しぶりに父が帰宅した父が呼んでいるということで、面倒だなと思いながらサロンに向かった私は目を丸くした。

 父の後ろに隠れるように、私とあまり年がかわらないくらいの男の子と女の子がいたからだ。

「あなた、そのみすぼらしい子共はなんなのです?」

 私と同じように呼ばれたらしい母は、顔を顰めて父を睨んだ。
 声に含まれる棘を隠そうともしない母に、小さな二人が身をすくませたのが見えた。

「マリアンネとエルヴィンだ。
 この子らの母親が死んだから、我が家で引き取ることにした」

 さらに顔を顰めた母の視線を父はさらりと受け流し、私と母のスカートの陰に隠れている弟に作り笑いを向けた。

「マリアンネはおまえたちの妹にあたる。
 仲良してあげなさい」

 やはり、そういうことか。
 よく見たら父と目元が似ている女の子は、父と愛人の間にできた子なのだ。

 それなら、父と全く似ていないその男の子は?

「では、この二人のことは任せたよ。
 私はまだ外で仕事があるからね」

「あなた! そんな勝手なことを!」

 父はなんとも無責任に二人を私たちに押し付けると、母の怒鳴り声に振り返ることなくさっさと屋敷を出て行ってしまった。

 名前もわからない男の子は、泣きそうな顔のマリアンネというらしい女の子を抱きしめて気丈にも私たちを睨みつけている。
 小さいながら、なんとしてでもマリアンネを守ろうと体を張っているのだ。

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