転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 母は怒りも露わな表情で舌打ちをし、それを見た弟も母を真似て同じような顔をした。
 使用人たちも困惑していて、どうしていいかわからないようだ。

 うん、これはよくない。
 私が何とかしないと、この二人はきっと酷い目にあうことになる。

 私には生まれた時から前世の記憶があり、体は七歳だが精神的にはもう大人なのだ。
 こんな小さな子たちが虐待されるなんて、見過ごせるわけがないではないか。

 私は迷わず駆け寄ると、緊張にこわばっている二人の手をやや強引に握った。

「あなたたちは、今日から私のものにするわ!
 こっちにいらっしゃい!」

 私のものなんて言ったのは、母が見ている前で優しくするのは悪手だと思ったからだ。
 父を愛していないにしても、愛人との子を憎らしく思うのは母の立場では当然のことだ。

 私は周囲の大人がなにか言う前に、二人の手を引いて自室へと駆け戻った。
 幸い、母の怒鳴り声が私たちを追いかけてくることはなく、二人も素直に私についてきた。

「私はクラリッサ。七歳よ。
 あなたたちの名前と年齢を教えてくれる?」

「……エルヴィン。八歳。
 マリアンネは五歳」

「始めまして。エルヴィン、マリアンネ」
 
 私はこれ以上怖がらせないようににっこりと笑って見せた。

「まずは、あなたたちのことを教えてちょうだい。
 それから、これからどうするか考えましょう」

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