転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「おかあさん……」

 亡くなったばかりの母親のことを話しているのを聞いたからか、マリアンネがしくしくと泣き出してしまった。
 そんな妹をエルヴィンは抱きしめ慰める。
 彼だってまだ八歳で、母が恋しくて泣きたいのは同じだろうに、ぐっと奥歯を噛みしめて涙を抑えているのを見ると胸が塞がる思いがした。

「マリーは、本当に伯爵様の子なんだ。
 お願いだから、マリーだけでもひきとってくれないか」

 しかも、どうやら彼はここを追い出されると思っているらしい。
 妹だけでもと懇願する健気な男の子に、私は胸が痛むほど切なくなった。

「なに言ってるの! 二人ともひきとるに決まってるでしょ!」

 すっかり情が移った私は二人を抱きしめた。

「これからは私があなたたちを守るわ!
 だって、私たちは家族になるんだから!」

「でも、俺は」

「マリアンネはあなたの妹で、私の妹でもあるわ。
 だから、私たち三人は家族なの!
 いいわね?」

 私とエルヴィンは赤の他人だが、マリアンネを間に挟めば家族みたいなものではないか。
 そういうことにすれば、この仲がいい兄妹は離れ離れにならなくていいのだ。

「……本当に、いいのか?」
 
「いいのよ! あなたもここにいていいの!」

 エルヴィンの澄んだ青い瞳に涙の膜が張った。
 父の子ではない彼は、きっと自分の行く末が不安でしかたがなくて、でも妹の前で泣くのを必死で我慢していたのだろう。

「大丈夫よ、エルヴィン。もうなにも心配いらないわ」

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