転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 にっこりと笑って見せると、青い瞳からぽろぽろと涙が零れた。
 年齢のわりにはしっかりしているようだが、まだ幼い少年なのだ。
 気が済むまで泣けばいい。

 私は二人が泣き止むまで、小さな背中をぽんぽんと叩き続けた。

 こうして、私たちは家族になったのだった。

 とはいえ、二人の身分は平民だ。
 私と同じ伯爵家の子として扱うわけにはいかない。

 というわけで、二人は私専属のメイドと侍従の見習いにすることにした。
 私専属なのだから、私の許可なく追い出されたりすることはないし、母や弟に無茶な命令をされても私が拒否することができる。
 こんな小さな子に仕事をさせるのは前世の倫理観では考えられないことだが、はっきりとした立場を与えるのはこの二人を守ることにもなるのだ。

 使用人たちも「お嬢様のお願いなら」と快く協力してくれることになった。

「お仕事は大変だと思うけど、これはあなたたちのためでもあるの。
 頑張ってね」

「はい、お姉さま。頑張ります!」

「お嬢のためにも、俺も頑張ります」

 かみ砕いてそういった事情を説明すると、幼いなりに同じ瞳の色をした私を姉だと理解したマリアンネは「お姉さまがそう言うなら」とメイド見習いになることを受け入れてくれた。
 エルヴィンも、私への恩義に報いるためといった感じで侍従見習いとなった。

 まだ小さな兄妹は真面目に仕事に取り組み、使用人たちから可愛がられるようになるのに時間はかからなかった。

 それに加え、エルヴィンは本人の希望もあり、騎士たちから剣術や体術を習い始めた。
 素質もあり熱心な彼はすぐに騎士たちにも気に入られ、「お嬢様専属護衛になれるように」と鍛えられるようになった。

< 36 / 147 >

この作品をシェア

pagetop