転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 もちろん、仕事や鍛錬だけをさせていたわけではない。
 子供にとって勉強がとても大切であることをよくわかっていた私は、私が勉強する時は三人一緒にお勉強の時間にすることにした。

 親切な家庭教師はエルヴィンたちにも読み書きや計算を教えてくれた。
 前世の記憶のおかげで既に基礎的な学力が身についている私より、二人の方がよほど教えがいがある生徒だったので、家庭教師も気合が入っていた。

「お姉さま! どうして私までお勉強しなくちゃいけないの?
 もうイヤ! 計算なんて大嫌い!」

 計算が苦手なマリアンネは、静かに歴史書を読んでいた私に泣きついてきた。
 どうやら、宿題の計算問題を解くのが嫌になったようだ。

 こうやって我儘を言って甘えてくる妹が、私は可愛くて仕方がない。

「お勉強はとても大事なのよ、マリー」

「でも、私はメイドになるんでしょう?
 メイドのお仕事に、こんな計算はいらないと思うわ」

「あなたは今は私の専属メイドだけど、将来はどうなるかわからないわ。
 お勉強ができたら、メイドのお仕事以外にもいろんなことができるようになるのよ」

「いろんなことって?」

「そうねぇ、例えばお医者さんやお城で働く文官とかは、とても頑張ってお勉強しないとなれないの。
 他にも、お勉強ができないと就けない職業はたくさんあるわ。
 そのうちマリーにも、将来の夢がきっとできると思うの。
 そうなった時、お勉強ができないせいで夢を諦めないといけなくなったら、とても悲しいでしょ?」

「う~……」

 まだ五歳のマリアンネは、しかめっ面で必死に想像力を働かせているようだ。
 
「お勉強は大変だけど、あなたの将来のためにもしっかりやっておかないといけないの。
 だから、頑張りましょうね」

「……」

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