転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「お姉さまはどうしてお勉強もお料理もできるの?
 誰にも習っていないんでしょう?」

 そんな素朴な疑問を口にしたのは、マリアンネだった。
 二歳年上なだけの私が、あれこれできるのを不思議に思うのは当然なことだ。

「それはね、私には前世の記憶があるからよ」

「ぜんせのきおく?」

「私がクラリッサ・キルステンとして生まれる前、別のところで別の人として生きていた時のことを覚えているのよ。
 今の私はまだ七歳だけど、前の私は大人だったの」

「いくらお嬢の言うことでも……そんなことあるのか?」

 エルヴィンは難しい顔で考え込んだ。

「ふふふ、嘘ではないけど信じなくてもいいわ。
 ただ、このことは私たち三人だけの秘密よ」

「ひみつ!」

「そうよ。秘密よ。誰にも言ってはいけないの。
 お約束できる?」

「できる! お姉さまとお兄さまと私だけのひみつね!」

 前世の記憶についてはよくわからなかったようだが、マリアンネは嬉しそうに笑った。

「……わかった。俺はお嬢を信じる。
 これは、俺たちだけの秘密だ」

 エルヴィンは、真面目な顔で頷いた。
 信じられないと思いつつも、私の言うことだから信じることに決めたようだ。

 意図したわけではなかったが、秘密を共有したことで私たちの絆は強くなった。

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