転生小説家の華麗なる円満離婚計画

 私とヘンリックが協議を重ねて決定した契約内容は、大まかに以下の通りとなった。

・三年間白い結婚を続けた後、子ができなかったからという理由で離縁する。
・私は体が弱いということにして、社交は最低限で基本は家に引き籠る。
・キルステン伯爵家とは没交渉で、援助も支援もしない。
・小説家としての活動は思う存分続けていい。
・もし恋人ができたらりしたら申告する。
・報告、連絡、相談は怠らない。
・快適に過ごせるよう、お互いに協力する。
・契約内容はお互いの同意のもとに随時変更することができる。

 お金に関しても、きっちりと取り決めをした。
 私は月に一度ヘンリックから決められた金額を受け取り、それで家政を取り仕切る。
 余ったら私の好きなように使うことができ、三年間貯金しておいて、離縁の時にそれを手切れ金代わりに持って行ってもいい、ということになった。
 ヘンリックが提示したのは、キルステン伯爵家の二か月分くらいの生活費相当の金額で、なんとも気前がいいことだと思いつつ、私は了承した。 

 結果として、私とヘンリックは出会って一か月で婚約し、その三か月後に正式に結婚した。
 ヘンリックほど身分のある高位貴族の結婚としては異例の準備期間の短さに加え、美貌の貴公子が選んだ相手がよりにもよって身持ちの悪い性悪令嬢ということで、世間の注目を浴びた。

 ヘンリックの養父母であるフューゲル侯爵夫妻は最初は反対していたが、実際に私に会うと噂が事実無根であるということを信じてくれただけでなく、私のキルステン伯爵家での扱いに憤り、さっさと結婚して家を出られるようにと後押ししてくれた。
 契約結婚であることは秘密なので申し訳ないと思うが、歓迎されるのはありがたいことだ。

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