転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 エルヴィンも酔って気が大きくなった庭師のおじさんに腕相撲を挑まれ圧勝し、男性陣から一目おかれるようになった。
 それはよかったのだが、「ここでは野暮ったい恰好しなくっていいんだよ!」とメイド頭に言われて、それもそうかとマリアンネがメイドキャップを外したところ、私たち三人以外の全員が目を丸くして絶句した。

 マリアンネの艶やかなストロベリーブロンドは珍しい色ではあるが、そんなに驚かれるほどではないはずなのに。

「……あんた、マリアンネっていう名前だったよね」

「はい、そうですが」

 首を傾げる私たち三人と、さっきまで賑やかに騒いでいたのに神妙な顔を見合わせる使用人たち。

「どうしたの? マリーがなにか?」

 私が問いかけると、メイド頭の夫である初老の家令が代表して答えてくれた。

「ええと、その……
 坊ちゃまがお戻りなられたら、はっきりすると思いますので」

「ヘンリック様に関係することなの?」

「はい……それ以上は、私たちの口からはなんとも……」

 どうやら、使用人の立場では口出しできない内容なようだ。
 使用人たちはただ困惑しているだけで、マリアンネや私たちに対する隔意や悪意は感じられない。
 
 それなら、別に構わない。

「よくわからないけど、ヘンリック様を待つしかないわけね。
 どちらにしろそうするつもりなのだし、当面の予定は変わらないわ。
 のんびりお帰りを待つことにしましょう」

 ヘンリックにも言われた通り、普通にのんびり過ごすだけだ。

 使用人たちも異論はないらしく、そろって頷いてくれたので、私もそれ以上この話題を掘り下げるようなことはしなかった。

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