転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「それより、早く次のを読んだ方がいいのではありませんか?
 読み終わらないとマリーに近づけないのでしょう?」

「はっ! そうだった! それではまた後で!」

 彼は慌ただしく自室へと戻って行った。

 マリアンネのことを忘れるくらい夢中になって読んでいたのか。
 そんなに気に入ってくれるなんて正直予想外だが、ファンが増えるのは嬉しいことでもある。

 翌朝、彼は夜遅くまでかかって三冊全てを読破したと、目の下にクマをつくりながらも嬉しそうに報告してきた。

「クラリッサ、きみの頭の中はどうなってるんだ!
 設定も展開も独創的すぎて、ページをめくる手が止められなかったよ!」

「ふふふ、それが私の持ち味ですのよ」

 なにせ、前世の記憶からネタを引っ張ってきているからね。

「この三冊以外にもたくさんあるんだよね?
 読ませてくれないか?」

「ええ、もちろんですわ。
 せっかくですから、マリーにお勧めを選んでもらってはいかが?」

 ノルマは達成したのだから、彼はマリアンネに近づくことができる。
 マリアンネは私の本に関しては私より詳しいくらいだし、二人の距離が縮まるきっかけになれば一石二鳥ではないか。

「……わかりました。お姉様がそうおっしゃるなら」

 彼に期待に満ちた瞳を向けられ、彼女は渋々といった様子で頷いた。

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