転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「その……翼に触ってみてもいいか?」

「ああ、いいぞ」

 恐る恐る手を伸ばし、烏のような黒い翼に触れるヘンリック。
 私も触らせてもらったことがあるが、最高級の羽飾りのような手触りをしている。

「服は破れてないな……これ、どうなってるんだ?」

「その翼は、俺の魔力が顕在化したものだ」

「魔力が顕在化……そんなの、聞いたこともない……」

「俺の魔力は、たぶん闇属性なんだと思う。
 わからないことだらけで、自分で研究するしかないんだ」

 エルヴィン右手をかざすと、掌の上にふわりと黒い霞が浮かび上がった。
 あれが闇属性の魔力なのだ。

「そうなのか……だから、魔力の属性を教えてくれなかったんだな」

 あの事件の後、私は図書館に通って魔法や魔力に関する文献を漁った。
 だが、彼のように黒い靄を操るような魔法について書かれている本はどれだけ探しても見つからなかった。

 もう無理かと諦めかけた時、偶然目についたのは魔族のことについて書かれている古い本だった。
 その本によると、魔族は四大元素属性以外にも光と闇属性の魔法を操ることができ、魔力操作により角や翼を生やすことができたのだそうだ。

 つまり、エルヴィンはどういうわけか魔族と同じようなことができるのだ。

 あの時を堺に、それまでは私と大差なかったはず彼の魔力量は膨大なものとなっていて、それも魔族の特性だとしたら説明がつく。

 彼は突然増えた魔力に苦労しながらも密かに訓練を重ね、今では難なく使いこなすことができるようになっている。

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