森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
「はぁい、これでおしまい!」
「とってもお似合い!」
「退魔のはごろも、できあがりぃ」
ぱちぱちと拍手を送る少女たちに首をかしげる。
「退魔のはごろも?」
「シネヴァの森はね、許された者しか入っちゃいけないの」
「でないと森を守る狼主に食べられちゃうの」
「狼主は女が大好きなの。入っていいって言われた女も、こっそり食べられちゃうの」
「ええっ?」
不穏な言葉に思わず驚きの声を上げた。
「っていう言い伝え」
「狼主なんて誰も見たことないし」
「だからこれは魔女様の森の儀式のお衣裳ってだけ」
少女のひとりが大きな姿見を運んでくる。そこに立つのは、真っ白な民族衣装を纏った自分の姿だった。今までにしたことのないような化粧が施されている。鮮やかな紅が唇に引かれ、濃い赤のアイラインは、角隠しを着た花嫁のように目に映った。
「さ、兄様きっと待ちくたびれてる!」
「女の支度は時間がかかるって!」
「男どもはみんなそう文句を言うの!」
入り口ではじめの少女たちに再び囲まれる。上がる嬌声の中進んでいくと、玄関先でジークヴァルトが待っていた。
ジークヴァルトも似た白い服に着替えていた。あれも神事のための衣裳なのだろう。
「じゃあ仕上げ仕上げ」
「これ着ないと姉様、凍っちゃう」
「はい、右手はこっち、左手はこっち」
せっかくの衣裳の上に、やぼったいコートを着せられる。美しく結いあがった頭にも、防寒用の耳当て付きのファーの帽子を被せられた。
「では参るとしますかな」
しわがれた声がして、そこにひとりの老人が立っていた。この街の長老らしく、長いあごひげに杖をつく姿はまさにザ・長老といった風貌だ。
その長老を先頭に、ジークヴァルトとリーゼロッテが続く。でこぼこした歩きにくい道は、それでもこの街の大通りのようだった。道端や家の中から、好奇の目が寄せられる。若い男に口笛を吹かれるたびに、ジークヴァルトの口がへの字に曲がった。
雪かきがされた細い道を進み、少女たちの歌声があとを追ってくる。行く先にうっそうとした雪の森が広がって、あれがきっとシネヴァの森なのだろう。
(いよいよ神事の時、魔女様とご対面ね……!)
お祭り騒ぎのような熱気に押されて、リーゼロッテは高揚した瞳を森へと向けた。
「とってもお似合い!」
「退魔のはごろも、できあがりぃ」
ぱちぱちと拍手を送る少女たちに首をかしげる。
「退魔のはごろも?」
「シネヴァの森はね、許された者しか入っちゃいけないの」
「でないと森を守る狼主に食べられちゃうの」
「狼主は女が大好きなの。入っていいって言われた女も、こっそり食べられちゃうの」
「ええっ?」
不穏な言葉に思わず驚きの声を上げた。
「っていう言い伝え」
「狼主なんて誰も見たことないし」
「だからこれは魔女様の森の儀式のお衣裳ってだけ」
少女のひとりが大きな姿見を運んでくる。そこに立つのは、真っ白な民族衣装を纏った自分の姿だった。今までにしたことのないような化粧が施されている。鮮やかな紅が唇に引かれ、濃い赤のアイラインは、角隠しを着た花嫁のように目に映った。
「さ、兄様きっと待ちくたびれてる!」
「女の支度は時間がかかるって!」
「男どもはみんなそう文句を言うの!」
入り口ではじめの少女たちに再び囲まれる。上がる嬌声の中進んでいくと、玄関先でジークヴァルトが待っていた。
ジークヴァルトも似た白い服に着替えていた。あれも神事のための衣裳なのだろう。
「じゃあ仕上げ仕上げ」
「これ着ないと姉様、凍っちゃう」
「はい、右手はこっち、左手はこっち」
せっかくの衣裳の上に、やぼったいコートを着せられる。美しく結いあがった頭にも、防寒用の耳当て付きのファーの帽子を被せられた。
「では参るとしますかな」
しわがれた声がして、そこにひとりの老人が立っていた。この街の長老らしく、長いあごひげに杖をつく姿はまさにザ・長老といった風貌だ。
その長老を先頭に、ジークヴァルトとリーゼロッテが続く。でこぼこした歩きにくい道は、それでもこの街の大通りのようだった。道端や家の中から、好奇の目が寄せられる。若い男に口笛を吹かれるたびに、ジークヴァルトの口がへの字に曲がった。
雪かきがされた細い道を進み、少女たちの歌声があとを追ってくる。行く先にうっそうとした雪の森が広がって、あれがきっとシネヴァの森なのだろう。
(いよいよ神事の時、魔女様とご対面ね……!)
お祭り騒ぎのような熱気に押されて、リーゼロッテは高揚した瞳を森へと向けた。