森の魔女と託宣の誓い -龍の託宣5-
◇
ラウラのあとに続いて、雪の避けられた石畳をゆっくり進む。着せられた衣裳の緑が光沢を放ち、動きとともに微細に変化していく。かさばる衣裳に気を使ってか、それは緩慢とも思える足取りだった。
(なんだか異形に転ばされていた頃のようね)
ジークヴァルトと再会するまでは、異形の者などひとつも視えなかった。その存在すらも知らなくて、どんなに気をつけても日々転びまくる自分は、ドジっ子属性だなどと思っていたくらいだ。
そんな中でも厳しいマナー教師の夫人のおかげで、随分と転ぶ回数が減ったことを思い出す。
「アルブレヒツベルガー夫人……」
もしかしたらロッテンマイヤーさんは、異形の者が視えていたのではないだろうか? そんな考えがふと浮かんだ。
「その方がどうかされたのですか?」
「いえ、少し知り合いの方を思い出していただけで」
うっかり口に出していたことに驚いて、リーゼロッテは慌てて首を振った。
「アルブレヒツベルガーというと侯爵家の方ですね」
「え? 夫人は侯爵家の方だったの……? 幼いころにお世話になったから、わたくし詳しいことは覚えてなくて。ラウラは貴族のことをよく知っているのね」
「以前、託宣の神事でその血筋の方がいらしたことがございましたから」
「神事をこなしてきた方って意外と多いのね」
「昔はもっと頻繁に執り行われていたと聞きました。さあ、泉まではもうすぐです。傾斜がきつくなっておりますので、お足元には十分お気をつけください」
下り坂をしばらく行くと、雪山の間が一気に開けた。湾曲した湖畔の先に湛えられた大きな湖。その奥に広がっているのは、果てしなく続く森の影だ。
石畳が途切れ、小粒の白い砂利の上を進んだ。先で待つジークヴァルトがこちらを振り返る。
ラウラが道を譲るように脇へとそれた。リーゼロッテはそのまま真っすぐと、青い衣装を纏うジークヴァルトを目指していった。
まだ届かない距離から、ジークヴァルトが手を差し伸べてくる。顔を見て、緊張が和らぐのが自分でも分かった。急く気を押さえて慎重に進み、ようやくその元へとたどり着く。
ラウラのあとに続いて、雪の避けられた石畳をゆっくり進む。着せられた衣裳の緑が光沢を放ち、動きとともに微細に変化していく。かさばる衣裳に気を使ってか、それは緩慢とも思える足取りだった。
(なんだか異形に転ばされていた頃のようね)
ジークヴァルトと再会するまでは、異形の者などひとつも視えなかった。その存在すらも知らなくて、どんなに気をつけても日々転びまくる自分は、ドジっ子属性だなどと思っていたくらいだ。
そんな中でも厳しいマナー教師の夫人のおかげで、随分と転ぶ回数が減ったことを思い出す。
「アルブレヒツベルガー夫人……」
もしかしたらロッテンマイヤーさんは、異形の者が視えていたのではないだろうか? そんな考えがふと浮かんだ。
「その方がどうかされたのですか?」
「いえ、少し知り合いの方を思い出していただけで」
うっかり口に出していたことに驚いて、リーゼロッテは慌てて首を振った。
「アルブレヒツベルガーというと侯爵家の方ですね」
「え? 夫人は侯爵家の方だったの……? 幼いころにお世話になったから、わたくし詳しいことは覚えてなくて。ラウラは貴族のことをよく知っているのね」
「以前、託宣の神事でその血筋の方がいらしたことがございましたから」
「神事をこなしてきた方って意外と多いのね」
「昔はもっと頻繁に執り行われていたと聞きました。さあ、泉まではもうすぐです。傾斜がきつくなっておりますので、お足元には十分お気をつけください」
下り坂をしばらく行くと、雪山の間が一気に開けた。湾曲した湖畔の先に湛えられた大きな湖。その奥に広がっているのは、果てしなく続く森の影だ。
石畳が途切れ、小粒の白い砂利の上を進んだ。先で待つジークヴァルトがこちらを振り返る。
ラウラが道を譲るように脇へとそれた。リーゼロッテはそのまま真っすぐと、青い衣装を纏うジークヴァルトを目指していった。
まだ届かない距離から、ジークヴァルトが手を差し伸べてくる。顔を見て、緊張が和らぐのが自分でも分かった。急く気を押さえて慎重に進み、ようやくその元へとたどり着く。